野草の楽しみ方
初候
玄鳥至る 野蒜*ノビル
筆者が幼少年期を過ごした時代は、身近な草花や木の実などが子どもたちの手ごろな「おやつ」であり「おもちゃ」でもあった。
ノビルもそれのひとつで、学校帰りの道すがらに見つけると、鱗茎(りんけい)を掘って齧(かじ)ったり、ときには3歳下の妹に「おくるみ人形」などを作ってやったものである。
ノビルは『古事記』にも登場する日本古来の食草で、今日でも生の鱗茎に味噌をつけたりして食されているが、子どものころのアソビゴコロを思い出して「おくるみ人形」の「おくるみ」に大葉(シソの葉)を使ってノビルを巻けば、ちょっとタノシイ酒の肴に変身する。
ノビルとアサツキはよく似るが、前者は鱗茎が球形、後者のそれはラッキョウ形だ。
次候
鴻雁北へ帰る 薇*ゼンマイ
ゼンマイは、山菜料理で最も多用されるひとつだが、アクが強く、食べるのに手間がかかるため、そのほとんどが乾燥させた「干しゼンマイ」として使われる。
それならば、「食べる」のではなく、ゼンマイの若苗が被っている薄茶色の綿毛を楽しんでみてはどうだろうか。
そのひとつが、秋田地方に伝わる「ぜんまい織り」で、この綿毛が防水性にすぐれているところから昔は「雨合羽」の生地に用いた。
そして、もうひとつは、ゼンマイの綿毛は羽化したばかりのカゲロウの胴体の色に似ているとして、ヤマメやイワナなどを釣るための毛鉤に使われており、これを「ゼンマイ胴の毛鉤」と呼ぶ。
ゼンマイは多年性のシダ植物で全国に分布。