野草の楽しみ方

初候
葭始めて生ず 片栗*カタクリ

カタクリはユリ科の多年草で、落葉樹林の明るい林床に群生する。

北海道、本州、四国、九州に分布するが、現在、四国や九州では希少種になっている。

4月の中旬ごろに高さ10〜20cmの花茎を伸ばし、その先端に花被片が反り返った紅紫色の六弁花を一個ずつつける。

カタクリはユリ科の多年草<『七十二候を楽しむ野草図鑑 季節の移ろいの中で心穏やかに暮らす』より>

地中の鱗茎には良質のデンプンが含まれ、これを精製したのが本来の「片栗粉」。

ただし、鱗茎を掘り採ってしまうと株が絶えてしまうので、一株から葉っぱ一枚か花だけを摘み、葉はおひたしか和え物で、花はこれらのほかサラダに加えると楽しい。

また、片栗デンプンは、子どもの嘔吐や下痢、大人の胃腸炎などにも効用がある。

『万葉集』にも「堅香子(かたかご)」の古名で登場する。

次候
霜止みて苗出る 吸葛*スイカズラ

スイカズラは、スイカズラ科のつる性小低木で、4月の末ごろから枝先の葉のわきに長さ3〜4cm内外の白い筒状唇弁花を上向きに2個ずつたくさんつけ、よく目立つ。

この花を付け根から抜き、抜き口をくわえて吸うと甘くて良い香りがし、子どもたちがこれを吸って遊んだところから「吸い葛」と呼ばれるようになった。

また、この花は、咲き始めは白色だが、少しすると黄色味を帯び、若い白花と古い黄花とが混ざりあって咲き乱れるために「金銀花」とも呼ぶ。

この「金銀花」をホワイトリカーに漬け込んだ花酒は、疲労回復、強壮、安眠、美容などに効用があるほか葉や茎も「忍冬(にんとう)」と呼び、健康茶や浴湯料として利用できる。