麻雀病患者が一人誕生していた
これはいけないと私は慌ててしまった。
「リャンソー」も「スーピン」もまったく知らなかった彼が、豪華なメンバーと遊び始めたからである。福地泡介(ふくちほうすけ)、黒鉄(くろがね)ヒロシ、北山竜(きたやまりゅう)などなど、漫画家には名だたる打ち手が揃っているのである。その中で打っている超ビギナーの園山さんの姿を想像するだけでもゾッとした。授業料がいくらあっても足りないだろうと恐しくもなった。
しかしその頃、私は自分が中心になってヒグマの仔(こ)を育てていたので、島を動くわけにはいかなかった。ときどき人里に船で渡って連絡をとるぐらいしかアドバイスの方法がないのである。
頼みの綱は、ただ一つしかない。
園山さんが、細かい技術を覚えてくれないことである。テンパイへと一直線に突き進んで、リーチをかけてしまえばいいのである。押したり引いたりしたのでは、経験が乏しいのだから危なくなってしまう。
「どうですか」
と、ドキドキしながら電話すると、
「いいものをすすめてくれました。夢中になってますよ」
「うーむ」
「この何ですか、ツキの波がどっとくるところがいいですね」
「え、もうそんな所まで行きましたか」
「週に四回やってますよ。毎日でもいいんですがね、そうそうはメンバーが集まらないものですから」
麻雀病患者が一人誕生していた。