外務省発表の『海外在留邦人数調査統計』(令和4年度)によれば、フランスには36,104人もの日本人が暮らしているそう。一方、40代半ばを過ぎて、パリ郊外に住む叔母ロズリーヌの家に居候することになったのが小説家・中島たい子さんです。毛玉のついたセーターでもおしゃれで、週に一度の掃除でも居心地のいい部屋、手間をかけないのに美味しい料理……。 とても自由で等身大の“フランス人”である叔母と暮らして見えてきたものとは?
どのように旬の素材を使うのか見ておかなきゃと
私が部屋を借りているところの隣りは農家で(一応、東京です)、畑で穫れたものを「無人販売」している。
新鮮な野菜が買えて嬉しいが、けっこうチャレンジャーな人が野菜を作っているようで、こんなの作ってみました、とばかりに珍しい野菜もときどき並んでいて驚く。生では食べられません、と注意書きしてあるイタリアのトマトや、普通の店では見ないルバーブなども季節になると置かれ、こちらも馴染みない食材にチャレンジして、食卓が豊かになった。
畑の向かい側にはアメリカンスクールがあり、子供を送迎する欧米人のお母さんたちも、こんなところにルバーブが! と彼女らにとっては馴染みある食材を嬉しそうに買っていく。フキとよく似ているそれは、同じように繊維質で、赤みがかっていて、中には真っ赤なものもある。味はイチゴに似ていて、ジャムなどにすると酸味が爽やかでとても美味しい。
叔母のロズリーヌも私が滞在中にルバーブでデザートを作ってくれた。
本場のそれは、太くて、味が濃く、清涼感のある日本のものとは別物と思えるぐらいだけれど、旬を楽しむ素材であることは間違いないようだった。隣りの「無人販売」のおかげで、季節の作物を以前よりも知るようになったからこそ、ハーベスト(収穫)を楽しむということでは筋金入りのフランスのキッチンで、叔母がどのように旬の素材を使うか、これは見ておかなきゃと思うようにもなった。