「ノーン!」

叔母の家の冷蔵庫の中は風通しがいい。そもそも、なぜものをあまりそこに入れないのかといえば、基本的にフランス人は古いものを食べないからでは? と私は見ていて感じた。

『パリのキッチンで四角いバゲットを焼きながら』(著:中島たい子/幻冬舎文庫)

たとえばこんなことがあった。滞在中、叔父夫婦にモン・サン=ミッシェルまで連れて行ってもらった。一泊二日で観光を終えて、叔父の家にもどってきた私は、小腹が空いたのでキッチンに行って冷蔵庫から牛乳パックを出して飲んでいた。すると、

「ノーン!」

叔母がすごい勢いで飛んできて、そんな古いものを飲んではダメです! と取り上げられた。

「もう飲んじゃった」と言うと、大丈夫か? と毒でも飲んだように私の顔をまじまじと見つめる。三、四日前に開封したものだから、問題ないと思うのだが。

その叔母の反応から、フランスって酪農王国なんだなぁ、とも思った。言うまでもなく、チーズやクリームなどの乳製品が豊富にある国で、新鮮なものを食べることにこだわるようだ(チーズは長く寝かすものもあるけど、それも食べごろに大変こだわる)。