分離ドレッシングと裏技があれば
ソフィーが冷蔵庫から出してきたドレッシングは、カフェオレボールになみなみと入っている緑色のオリーブ油の底に、ディジョンマスタード(辛くないフレンチマスタード)の固まりが沈んでいるものだった。
もちろん塩コショウ、バルサミコ酢などのビネガーも入っているが、作るときも食べるときも、無理に混ぜあわせる努力はせず、完全に分離しているものをスプーンで数回、簡単に混ぜて、かけるだけ。これがシンプルだけど、美味しい。
オイルもビネガーも、上等なものを使っているからではあるけれど。食べる前に、ドレッシングのビンを手がちぎれるほどふっていた、あの行為はいったいなんだったのだ? と思ってしまった。
白く乳化させることの意味も、今となってはまったくわからない。玉ねぎやニンニクなども入れなくていいのね、と思ったが、以前、私の母がロズリーヌから教わったというテクニックを、ふと思い出した。
それはニンニクの切り口を、サラダボールの内側にくるくると二、三周こすりつけるだけ、というもの。そのボールに生野菜を盛れば、いい香りがうつり、ニンニクそのものは口に入らないから強くなくていい。分離ドレッシングとその裏技があれば、もう充分だ。