(写真提供:Photo AC)
外務省発表の『海外在留邦人数調査統計』(令和4年度)によれば、フランスには36,104人もの日本人が暮らしているそう。一方、40代半ばを過ぎて、パリ郊外に住む叔母ロズリーヌの家に居候することになったのが小説家・中島たい子さんです。毛玉のついたセーターでもおしゃれで、週に一度の掃除でも居心地のいい部屋、手間をかけないのに美味しい料理……。 とても自由で等身大の“フランス人”である叔母と暮らして見えてきたものとは?

普段食べるものはいたってシンプル

叔母ロズリーヌの長女、ソフィーは私より三つ年下で、彼女も四十代になった。叔母に似てすらりとしていて、勉強家であり、都会派でもある。

「パックス」というフランスでは法的に認められている事実婚の夫がいて、子供は小学生の男の子が二人。ガブリエルとマルタンは、クォーターになるけど、日本の血を探すのは難しいぐらい色が白くて目が大きくて、童話に出てくる王子様のよう。

マルタンが生まれてすぐに病気をした経緯もあり、ソフィーは普段から食べるものにとても気をつかっている。それを知らず、日本からのお土産に子供たちが喜びそうな、でも体に悪そうな駄菓子を山ほど持ってきた私は慌てて隠し、それは旅行中の私の非常食となった。

とはいえ、日本と同じだなと思った。私の友人などもそこそこ余裕がある家は、自分はさておき子供の健康のために選んで食材を買っている。

フランスにもナチュラル系のスーパーがあり、若い女性や、子供を連れたお母さんが買物をしていた。ソフィーも、ほとんどの食材をその手の自然食品店で買ったり、届けてもらったりしていた。

おかげでフランスに到着した日から、こちらも厳選された食材を味わうことになり、外で安いランチなどを食べるとクオリティーが低いのがわかってしまう。けれど、毎食が贅沢というわけではない。ソフィーたちが普段食べるものはいたってシンプルで、驚くほどだ。