群馬県藤岡市で中華食堂「銀華亭」を営む、101歳の天川ふくさん(撮影:藤澤靖子)
長い人生、いつも明るい気分でいるのは難しいもの。笑顔が輝く81歳、92歳、101歳の3人の女性は、山あり谷ありの日々をどう歩んできたのでしょうか(撮影=藤澤靖子)

考えるだけ考えたら、切り替えて次に行く

群馬県藤岡市にある、中華食堂「銀華亭」。11時半の開店と同時に次々と埋まっていくテーブルの間を、小さな体で注文を取ってまわるのは天川ふくさん、101歳だ。しゃんと伸びた背筋やきびきびとした動きを見ると、「年齢を知って本当に驚いた」という常連さんの言葉もむべなるかな。

「自分でも、よくまあ今までやってきたもんだと思います。気づいたら60年ほど経っちゃったわね」と語る。父親は養蚕の知識を伝える分教場(小規模な学校)を開き、母親もその手伝いをしていたため、天川さんは幼い頃から弟妹の世話や家事で忙しく働いてきたという。

女学校を出たら花嫁修業をして家庭に入るものと思っていたが、「戦争が始まって、若い男性はみんな戦場に行っちゃったでしょう。相手も見つからないし、家でぶらぶらしていても仕方ないから、地元のバス会社で事務員になったんです」。

戦後、26歳でお見合い結婚。夫の実家は映画館を経営していた。「この人と結婚すれば好きなだけ映画が観られると喜んでいたのだけど、実際には上映の準備や接客で忙しくて、そんな暇はなかったわ。人生は思うようにいかないわね(笑)」。

神経質で、いろいろなことを考え込む気性だという天川さん。「だけど考えるだけ考えて、『もう、なるようにしかならない』とわかったら、スパッと切り替えて次に行く。そのへんはあっけらかんとしています」