自発的に学んだ平安時代の女性たち

私が親しみを抱いているのは、平安時代の中流階級に生まれた女性たちです。

平民でもなければ、貴族のような特権階級でもない、中間あたりの階級の男性は、仕官の資格として学問を修めなければなりませんでした。

そして、この階級の女性もまた競って高等教育を修めたのです。

教養のある親兄弟は学問・芸術の価値と必要性を知り、女性たちの高等教育を奨励しました。

父や兄が熱心に自ら教えたり、家庭教師とも言うべき人たちを雇って教えたりもしたのです。

『与謝野晶子 愛と理性の言葉』(著:与謝野晶子・松村由利子/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

紫式部が幼いころに、父親の藤原為時(ふじわらのためとき)が中国の歴史書「史記」を教えたのは有名な話ですが、兄の惟規(のぶのり)も常に妹の学問の相手となりました。

この階級の家庭は、初めから学問芸術を生活の重要条件としていました。

こういう恵まれた環境に生まれた女性たちは、自発的に学び、自己を教育しました。

その教育の質の高さは、今の女子大学の比ではないと思います。

「平安朝の女性」(『女性改造』一九二四年九月)