個性の創造
常識が不足しているのも困りますが、それがあまりありすぎて、肥満した人の心臓が脂肪過多で圧迫されるように、人間の命である想像力を萎縮させてしまう結果になっては困ります。
個性の独立を主張する時代にあっては、他人の型や法則をまねる必要はありません。
中学以上の教育においては、個性の創造を主として指導しなければなりません。
受験の準備のためでなく、個人の希望と長所に従って、自由に学べる制度を望みます。
「伊豆山より」(『人間礼拝』より)
※本稿は、『与謝野晶子 愛と理性の言葉』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
『与謝野晶子 愛と理性の言葉』(著:与謝野晶子・松村由利子/ディスカヴァー・トゥエンティワン)
近代歌壇を代表する歌人で『みだれ髪』や『君死にたまふことなかれ』などで知られる与謝野晶子は、文学の世界のみならず、社会評論の世界でも活躍しました。
晶子が書いた15冊の評論集の中から、選りすぐりの言葉たちと、晶子の歌や詩を織り交ぜながら「学ぶこと」「働くこと」「人生」「愛」「自由」などのテーマごとに読みやすく、わかりやすくまとめました。
出典=『与謝野晶子 愛と理性の言葉』(著:与謝野晶子・松村由利子/ディスカヴァー・トゥエンティワン)
与謝野晶子
歌人
日本の歌人、作家、評論家。大阪・堺市に生まれる。1900年に与謝野鉄幹の主宰する新詩社に入り、その機関誌「明星」に短歌を発表するようになる。1901年に出版された第一歌集『みだれ髪』は、恋愛を謳歌する大胆で浪漫的な作風で、大きな反響を呼ぶ。出版された歌集は共著を含め24冊、社会評論や随筆をまとめた本は15冊に上る。童話は100編、詩や童謡は600編を超え、小説や歌論集も著した。『源氏物語』『栄華物語』をはじめとする古典の現代語訳にも多く取り組む。西村伊作らと共に創設した。文化学院では教鞭をとり、国語教科書の編纂に携わった。
松村由利子
歌人、フリーライター
1960年福岡県生まれ。歌人。朝日新聞、毎日新聞で記者として20年余働いた後、2006年からフリーランスに。著書に『与謝野晶子』(中央公論新社)、『31文字のなかの科学』(NTT出版)、『短歌を詠む科学者たち』(春秋社)、『ジャーナリスト与謝野晶子』(短歌研究社)、『科学をうたう』(春秋社)など。歌集に『光のアラベスク』(砂子屋書房)など。