2024年のNHK大河ドラマ『光る君へ』で注目を集める平安時代。主人公の紫式部のライバルであり、同時代に才能を発揮した作家、清少納言はどんな女性だったのでしょうか。「私は紫式部より清少納言のほうが断然好き」と公言してはばからない作家、下重暁子氏が、「枕草子」の魅力をわかりやすく解説します。縮こまらず、何事も面白がりながら、しかし一人の個として意見を持つ。清少納言の人間的魅力とその生き方は、現代の私たちに多くのことを教えてくれます。
人生で三度目の、原文で読む「枕草子」
昨年の夏は「枕草子」を原文で読んでいた。大学時代にパラパラめくっていたし、その後小冊子で「枕草子の季節感」の連載のためにもう一度、そして今度が三度目である。
甘く見ていた。全文になると大部になることも、訳注があれば、なんとか理解できるはずとたかをくくっていた。
そして今回その気になって正面からぶつかってみると、実に奥深く、現代語と違って解釈が難しい。何度も投げ出したくなった。しかし、自分で言い出したことである。
NHKの大河ドラマが今回紫式部を取り上げた。「光る君へ」である。
その話題の中で「私は清少納言の方が好きなんだけど……」と言ってしまった手前、「それなら私の清少納言考を書いてみたら」と言われて逃げ出すわけにはいかなくなった。
そこで一年ほど格闘することになった。平安時代の一人の秀れた女性作家と付き合うことで、なぜ清少納言に惹かれたかがわかった。