なぜ今、清少納言を取り上げるのか
二人の女性のうち、私が興味を持ったのは、清少納言だった。
なぜなら、その文体にまず驚いたのだ。
「春は、あけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、すこしあかりて、紫だちたる雲の、細くたなびきたる。」
「夏は、夜。……」「秋は、夕ぐれ。……」「冬は、つとめて。……」と最初から体言止めで、リズムを取っている。
これは清少納言が得意とする漢詩の影響なのか。
結論を先に言い切ってしまってから、その後に説明する、こんな思い切った文章を書くのは、男性の中にも数少ない。文章というより詩に近いのだ。
数ある文章の中で、説明すらなく、名詞という体言止めを並べただけで一つの作品に仕上げる。「枕草子」はその意味で詩集に近い。
かと思うと、次の段には、通ってくる男達との論争がある。ここでも決して彼女は負けてはいない。鋭い刃をつきつけて、男達をやっつける。