「本当に申し訳ありません」
みなさんに謝ると、
「いえいえ、人生ではじめて点てた濃茶をいただけてうれしいですよ」
などといってくださる。
「ああっ、本当に申し訳ないっ」
頭を掻きむしりたくなった。
そして濃茶には必ず拝見があるので、お茶入の形、窯元、仕覆の裂地についても聞かれる。何もわからないので、前もって師匠から、濃茶のお茶銘、お詰もうかがい、そのうえ、
「お茶入の形は肩衝(かたつき)、窯元は瀬戸、お仕覆は紹鴎緞子(じょうおうどんす)ですよ」
と教えていただいたのに、いざ拝見の問題のときには忘れて、
「えーと、えーと」
とあわてていたら、先輩方がそれぞれその場で教えてくださったのがありがたかった。闘球氏の濃茶点前のとき、拝見の際にかわいい柄だなと見ていた仕覆の裂地が、「駱駝文苺手錦(らくだもんいちごでにしき)」という名前だとわかって、なぜかとてもうれしくなった。
白雪さんはひさご棚で薄茶のお稽古をなさっていたが、天板の上に棗を荘(かざ)り、柄杓も掛釘に掛けていた。へええと見ていたら、
「持ち帰るのは建水だけという、総荘りのお点前もあるんですよ」
とお点前を終えて戻ってきた彼女が教えてくれた。