アイデア数が増えただけでなく質の高いアイデアが出せるように

毎回問題を変え、いろいろな問題に対して「自分で考えた後、他者のさまざまな考えを知る」ということを繰り返す発想トレーニングを12回にわたって行いました。これは多面的な原因推理力を伸ばす上で、大変効果がありました。発想量すなわちアイデア数が増えただけでなく、質の高いアイデアが出せるようになっていたのです。

この結果から、思考を柔軟にするためには、やはり自分以外の考えに触れることが役立つということがわかります。

必ずしも実際に、他者が目の前にいなくてもいいのです。「他者との疑似的な交流」によって多様な考えに触れることで、多面的で柔軟な思考力を身につけることができます。

ただし、多様な考えに触れるのは、自分で徹底的に考え尽くした後にした方がよいでしょう。

「まず自分で考えてから、他者の考えに触れる」というこのトレーニングの基本手続きを、後に「IPE(Idea Post-Exposure)パラダイム」と名づけました。IPEとは、(他者の)考えに事後的に触れるという意味です。

多様な考えに触れるのは、自分で徹底的に考え尽くした後にした方がよい(写真提供:写真AC)

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*1. Sannomiya, M., Shimamune, S., & Morita, Y. (2000) Creativity training in causal inference: The effects of instruction type and presenting examples.Poster presented at the 4th International Conference on Thinking, University of Durham.

※本稿は、『メタ認知』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

メタ認知-あなたの頭はもっとよくなる』(著:三宮真智子/中公新書ラクレ)

自分の頭の中にいて、冷静で客観的な判断をしてくれる「もうひとりの自分」。それが「メタ認知」だ。この「もうひとりの自分」がもっと活躍すれば、「どうせできない」といったメンタルブロックや、いつも繰り返してしまう過ち、考え方のクセなどを克服して、脳のパフォーマンスを最大限に発揮させることができる! 認知心理学、教育心理学の専門家が指南する、より賢い「頭の使い方」。