篠田さんの自宅で。篠田さんはこのとき、103歳ころではないかと思われる(写真提供◎松木さん)

 

そして、その真っ赤な葉鶏頭を赤い絵の具を使わず、墨を濃く磨って描きたいと歌っているのです。心に働きかける抽象表現の世界を感じるこの歌に、先生は大変共感なさっていました。

また、先生は弟子をとる方ではありません。なぜかとお聞きすると、「自分の思いを生み出そうとする行為を、どのようにして指導するのですか。

心に育てたものを表現するのが芸術です。弟子は生み得るわけがありません」と。でも「生き方の師なら」と私に言ってくださいました。

 

<後編につづく

【関連記事】
107歳まで生きた美術家・篠田桃紅さんの作品館を開館。「努力で成るものは、たかが知れてますわよ」の言葉に自分の指針を修正しながら
篠田桃紅「9月1日の関東大震災で生活激変。『西洋』が流れ込んできて和装が洋装に変わった」
篠田桃紅が遺した言葉「年を取ることは新しい発見を得ること」