「観測隊の隊長に女性が起用されるのは日本初ということもあり、こうして取材を受ける機会が増えました」(撮影:洞澤佐智子)
2024年12月に南極に向かう第66次南極地域観測隊の隊長に、東京大学大気海洋研究所教授の原田尚美さんが就いた。33年前の初参加から、今回で三度目の南極行きとなる。「初の女性隊長」と注目されるなか、その意気込みを聞いた(構成=山田真理 撮影=洞澤佐智子)

南極から未来の地球環境を予測できる

南極地域観測隊は、1957年に第1次隊が昭和基地を建設してから、60年以上にわたって観測を続けてきました。

人の活動がほとんど行われていない南極は、氷床に堆積したり凍結した自然物質の保存状態がよく、大気、地質、海洋、生物などの正確なデータがとりやすい貴重な環境。地球のタイムカプセルのような場所ですから、調査や研究を続けることで過去に起きた自然現象だけでなく、未来の地球環境の予測もできるのです。

観測隊の隊長に女性が起用されるのは日本初ということもあり、こうして取材を受ける機会が増えました。24歳で初めて参加したときも、史上2人目の女性隊員、とクローズアップされて。

そのことに当時は若者なりの反発もありましたが(笑)、年齢を重ね、私というフィルターを通して南極地域観測隊が注目され、研究について知っていただく機会になるのは嬉しいことだと捉えるようになりました。

観測隊の活動の様子は、これまで多くの体験記などで紹介されており、ご存じの方も多いでしょう。観測隊は12月から翌3月まで観測を行う「夏隊」と、その後も残って一冬を越す「越冬隊」にわけられます。

それぞれ「観測系」と、輸送や建築、機械、通信、調理、医療など多岐にわたる分野を担う「設営系」で構成され、同行記者や教員もいるので、パーティーは100人に及びます。