篠田さんから届く葉書の文面はいつも色鉛筆で認められており、あるとき「筆のお手紙をください」と言ったところ、この便りが届いたという。お正月に篠田さんを訪ねた際にこの先の計画を話したことを「十二ヶ月への想いをたのしく」と書かれている。松木さんの本名である「シュウ」に「志遊宇」という字があてられたのはこのときがはじめてで、以来、松木さんはこの名前を大切にしている(写真提供◎松木さん)

 

言葉はいつも丁寧で、私のような年下の者に対しても「おやりになるんですか?」とおっしゃいますから、常に緊張したものです。電話の際、私はペンと紙をそばに置き、先生のお話しになったことを一言一句、漏らさないように記録しました。それが段ボール一箱分はあります。

いまの場所に再オープンした際、年齢的に先生をお招きすることは叶いませんでしたが、このような葉書が届きました。

「長い間大変でしたね。でも、ぬごとであったと思います。少しお休みくださいね。無為は大切です 桃紅」

どういうことが書いてあるか、すぐにはわかりかねましたが、ぬごとの「ぬ」は完了形。「やらなければならないことだったんですね」という意味です。先生は私の信念をわかってくださっていました。

そして、がむしゃらに頑張らず、静かに時を重ねることも大切ですよ、と。私は涙せずにはいられず、感服し、そして感謝しました。これは、101歳の先生からいただいたお便りです。