嘉子が語ったこと

例えば、嘉子は以下のように述べています。

「女弁護士を目指しての受験だなどと云はれては困ります。法律を始めたのはこれからの婦人の社会生活にはどうしても法律の知識が常識として必要だと思つたからです(中略)これから法律の仕事に従事するかつて……それは今まだ何とも言へませんワ……」

『三淵嘉子 先駆者であり続けた女性法曹の物語』(著:神野潔/日本能率協会マネジメントセンター)

「之から先の方針も未だ決まつて居りません状態です。仮令(たとい)若し弁護士になるに致しましても職業として立つて行くと云ふよりは、只管(ひたすら)不幸な方々の御相談相手として少しでも御力になりたいと思つて居ります。

それには余りにも世間知らずの無力な、空虚な自分を感じます。晩成を期して、学問の上でも、社会の事に就いてももつともつと勉強し、経験を積んでその上での事でございます。そこ迄自分がやつて行けますか何うか……。只私の望みは仮令何の道を歩むに致しましても夫々の道に応じて、世の為、人の為、自己の最善を尽したいと思ふのみでございます。」