みちのくの雄

秀吉軍に騙された政実さんは、7人の城将たちとともに豊臣秀次の陣がある三迫(さんのはさま。宮城県栗原市)まで護送され、そこで処刑されました。享年は56と伝えられています。

政実さんの遺骸は斬首された場所に埋められ、塚が建立されたそうですが、江戸時代になると塚は忘れられていき、荒れ果ててしまったといいます。

しかし、明治時代初期に、とある行者の夢に政実さんが現れたため、何かの暗示だろうと草むらを探索したところ遺骸の埋まった塚が発見され、その供養のために「九ノ戸神社」が建立されています。九ノ戸神社の近くには、政実さんの首級(しゅきゅう)を洗ったとされる「首級清めの池」が伝えられています。

また、政実さんの首は京都の戻橋に晒されたともいわれていますが、政実さんの家臣(佐藤外記)が乞食の姿になって密かに首を盗み出して九戸村に埋葬したとも伝えられていて、今も「九戸左近将監(さこんしょうげん)政実 首塚」が残されています。

首塚の近くにある九戸神社は、九戸家が戦勝祈願をしたとされる神社で、隣には1995年に建立された「政実神社」があり、祭神はもちろん政実さんです。そこからすぐ東には九戸城以前の九戸家の居城だと考えられる「大名舘」や、先ほど登場した菩提寺の長興寺があります。

激戦となった九戸城は、現在整備が進み、堀や土塁、石垣などの遺構を楽しむことができます。さらに、地元では「九戸政実プロジェクト」が発足! 政実さんを活用した観光振興が活発化し、「九戸政実武将隊」(現在は「南部武将隊」に改名)やイケメンの政実さんのキャラクターも誕生しました。

あなたも、戦国史の最後を彩った“みちのくの雄”を訪ねてみてはいかがでしょうか!

※本稿は、『どんマイナー武将伝説』(柏書房)の一部を再編集したものです。


どんマイナー武将伝説』(著:長谷川ヨシテル/柏書房)

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