日本でも知られるピート・ハミル

わたしの夫はピート・ハミル。

日本では映画『幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ』の原作者として知られるが、米国ではベトナム反戦運動が盛んだった60年代、いち早く反戦を訴え、市民の声を代弁するコラムニストとして、ニュージャーナリズムの旗手として大いに健筆をふるった。

(写真提供:Photo AC)

ニューヨーカーの横顔を描く短編のほか小説も発表、自らの半生を描く『ドリンキング・ライフ』、歴史小説『フォーエヴァー』などがベストセラーとなった。

コラムニストとして活躍していた頃、ピートはプロスペクト公園に面した大きな家に住んでいた。この家は当時から数倍以上値上がりしており、本人も手放したことをしきりに後悔していた。

その点、褐色砂岩のアパートは彼の希望にほぼ沿ったものだった。大きな庭があるし、2階には庭を見下ろすバルコニーがある。

唯一の難点は家賃が予算を遥かに超えていることだったが、清水の舞台から飛び降りる覚悟で借りることにした。

わたしたちはここで最後の2年を過ごし、彼がいなくなった後、わたしは長く住んでいたトライベッカのロフトへ戻って、ひとり暮らしをするようになった。