「大人になったら誰にも追い出されないように自分の家をほしいと思っていました」(撮影:大河内禎)
フェミニズム(女性学)研究の第一人者として、メディアで活躍してきた田嶋陽子さん。35歳から何度も引っ越しを繰り返した末、ついに終の棲家を見つけました(構成=篠藤ゆり 撮影=大河内禎)

<前編よりつづく

35歳の時、家を買ったから

東京で初めて家を買ったのは、法政大学の助教授になった35歳の時でした。私は子どもの頃から母に「悪い子だから」と厳しく育てられ、いつ家を追い出されるかと恐怖におびえていました。だから大人になったら誰にも追い出されないように自分の家をほしいと思っていました。

就職すると同時に必死に頭金を貯め手に入れたのが、東京・立川市の一軒家でした(馬が飼いたかったから一軒家にしましたが、それは諦めました)。

ところが、私が女だからという理由で、銀行がなかなかお金を貸してくれない。いやぁ、悔しかったですよ。間に入った建設会社が必死に銀行を説得してくれ、晴れて持ち家を手に入れました。

ただ、通勤に2時間もかかって大変。そこで数年後にそこを売って、もう少し職場の近くに引っ越しました。そうやってじりじりと大学に近づいてゆき、55歳の時に四谷に家を建て、10年間暮らしました。

ほぼ30年間勤めた大学を退職してから、そこを売って、今度は新幹線に乗るのに便利なように、東京駅に歩いても行ける距離のマンションに引っ越し。それを売却して、終の棲家として選んだのが、今のシニアハウスです。