でも悔しいから、自分でコンサートを開いたんです。

ありがたいことに友人知人やファンの人たちが大勢かけつけてくれました。ところが、いざ歌おうとしても、あがって歌詞が出てこない。そうそう簡単にできるものじゃないなと実感しました。

リベンジしたくて、練習を続けては人前で歌っているうちに、気づいたらもうすぐ20年。バカですよねぇ~。(笑)

70代で始めた書アートは、今年で個展も9回目。2019年に書いた作品「娑婆」で、新美展の内閣総理大臣賞をもらいました。まさか私が批判ばかりしていた、安倍(晋三)さんの賞をもらうことになるなんて。(笑)

考えてみたら、小学校の頃から歌うのも絵も好きだったんです。でも、合唱コンクールで身体を揺らしながら歌ったら注意されるなど、「好き」をくじかれることが多かった。そういう一種の抑圧があると、気持ちが萎えてしまう。

ところが、60代半ばを過ぎて、眠っていた「好き」がポッと芽を出してきた、という感じかな。

80歳前後で軽井沢と東京、2つの大きな引っ越しをしたせいか、ちょっと疲れ気味ですが、今はとても人生が楽です。自分なりに死ぬ準備も整い、仕事や趣味など能天気に好きなことをやっていられるんですから。

私はかねがね「92歳まで生きます」と公言していました。私はずっと母親から抑圧され、反発も反論もできなかったのに、フェミニズムを学び、人生経験を積んだことで46歳で初めてノーが言えた。その日を記念して、それまでの倍は生きなきゃと思っていたからです。

でも、いまや人生100年時代。シニアハウスで90代半ば過ぎてもお元気な方々を見ると、何かできるのかなと思えてきます。92歳以降、何を目標として生きていくかまだ決まっていないのが、悩みかもしれません。(笑)