シニアハウス内のレストランで舌鼓を打つ田嶋さん

60代半ばを過ぎて「好き」が芽を出した

振り返ってみると、私は今まで常に、何かを失ったり、やめたりすることで、新しいものに出会ってきたような気がします。

60歳で社民党から立候補して参議院議員になりましたが、62歳で離党。議員をやめ、誹謗中傷から逃れるように、軽井沢で読書三昧の日々を送っていました。

そんな時、近所の酒屋のおじさんから「先生、軽井沢の町おこしのために歌でも歌ってよ」と声をかけられたんです。歌なんて歌ったことないのに「いいですね」と答えてしまった。

当時、軽井沢はちょっとさびれていたので、「町おこし」という言葉に反応し、住まわせてもらっている恩返しができるのなら、と。友だちがシャンソンをやっていたので、じゃあそれにするかと習い始めたわけです。

ところが3ヵ月経っても、酒屋のおじさんから何の音沙汰もない。「あの話、どうなりました?」と聞いたら、「いやぁ、あの話はなかったことに」だって。「素人に歌わせてどうする」なんて反対されたんじゃない?