「あんたは、どうしてヤクザの肩を持つんだ? 弱みでも握られているのか?」
「あんた、本当に失礼だな。妙な勘ぐりはやめてくれ。私は人として、阿岐本さんに普通に接しているだけだ」
「相手はヤクザだぞ」
「だからどうした。俺は坊主だぞ」
 池中が田代住職を睨んだ。
 阿岐本が言った。
「池中さんは、普段は何をされておられるのですか?」
 池中が口ごもる。代わって田代住職がこたえた。
「商店街にある煎餅(せんべい)屋の先代なんです」
「先代?」
「ええ。今は代替わりをして息子さんが店主をされています。池中さんは、隠居されたわけですが、今でも連合会の顔役の一人なんです」
「ほう、連合会……? 商店街連合会のことですね?」
「そうです」
「では、そこで原磯さんといっしょに活動をなさっているのですね」
「ええ、そうですね。原磯さんも池中さんも役員をやられています」
「なるほど……」
 池中は言った。
「それがどうした。なあ住職。これ以上俺の個人情報をヤクザに教えるのはやめてくれ」