阿岐本が池中に尋ねた。
「原磯さんとはお親しいのですね?」
「こたえたくないね」
「そう警戒なさることはありません」
「警戒するね。さっき脅かされたからな」
「ご心配いりません。私ら博徒ですから、損得にはうるさいですが、利害関係のない方々と対立することはありません」
「じゃあ、なんでこの寺に出入りしているんだ?」
 それを補うように、河合が言った。
「この寺だけじゃないんですよ。駒吉神社にも足を運んでいるらしい」
 阿岐本がこたえた。
「心配なことがあるからです」
「何が心配だって言うんだ」
「この町から神社も寺もなくなっちまうんじゃねえかって……」
 町内会役員と池中は、互いに顔を見合わせた。彼らは驚いた様子だった。日村も驚いた。
 藤堂が彼らを代表する形で尋ねた。
「神社も寺もなくなる……? それはどういうことです?」
「言ったとおりの意味です」
「意味がわかりません」
「一つお訊きしますが。どうお思いですか?」
「どう思うか?」
「ええ。神社や寺がなくなると聞いて……」
「そりゃあ……」
 藤堂たちはまた顔を見合わせた。「由々しき問題だと思いますね」