「そうですか? それほど気にされていないんじゃないですか?」
「そんなことはありません」
「だって、鐘の音がうるさいんでしょう?」
「ああ、それは……」
藤堂が困った顔になる。「一部の住民が言っていることで……」
「でも、役所や警察が寺の鐘をなくそうと考えているようじゃねえですか」
「どうでしょう」
藤堂は思案顔だ。「私は直接、区役所や警察からそういった話を聞いたことがありませんので……」
「俺は聞いてる」
田代住職が言った。「区役所の斉木とか、中目黒署の警察官がプレッシャーをかけに来るんだ」
藤堂が阿岐本に言う。
「寺の鐘と、この地域から神社や寺がなくなるという話と、直接に関係はないでしょう」
「どうでしょうね。まったく無関係とは思えません。その鍵を握っているのが、原磯さんのような気がするんですが……」
藤堂が眉をひそめる。
「原磯さんが……? それはどういうことですか?」
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