(写真提供:Photo AC)
厚生労働省の「令和4年 人口動態統計」によると、日本人の死因第2位は「心疾患」で、23万2879人が亡くなったそう。そのようななか、「命にかかわる血管と心臓の病気も、生活習慣で予防できる」と話すのは、2012年に当時の天皇陛下(現・上皇陛下)の執刀医を務めたことで広く知られる、心臓血管外科医の天野篤先生。今回は、天野先生が「命を落とすリスク」を減らすためのアドバイスをまとめた自著『60代、70代なら知っておく 血管と心臓を守る日常』より、一部引用、再編集してお届けします。

毎日30分、あるいは週150分の運動が血管を軟らかにする

動脈硬化の予防についてお話しします。

心臓から送り出される血液を全身に行き渡らせる役割を担うのが動脈です。

その動脈が硬くなって柔軟性が失われた状態を「動脈硬化」といいますが、動脈硬化が続くと、狭心症、心筋梗塞、大動脈解離、大動脈弁狭窄症といった心臓疾患をはじめ、脳梗塞や脳出血といった病気の大きなリスク因子になります。

しかも、現時点では動脈硬化そのものを治す治療は存在しないので、予防が何より大切なのです。

しっかり予防するためには、食事や薬による脂質管理(コレステロールの管理)に加え、運動がとても重要です。

運動によって、なぜ動脈硬化が改善するのかについてのメカニズムはまだはっきりわかってはいませんが、運動で血流量が増えると、もっとも内側にある血管内皮細胞に「ずり応力」という物理的刺激が加わり、血管を軟らかくする作用がある一酸化窒素が増えるためだと考えられています。