降圧薬が効きすぎて、血圧の低下を招く場合も

ほかにも、女性で生理が重い人、運動習慣があって汗をたくさんかくのに水分補給が少ない人など、循環血液量が変化する要因がある場合は起立性低血圧に注意したほうがいいでしょう。

また、高齢者の骨格筋量が減少し、筋力もしくは歩行速度などの身体機能が低下する「サルコペニア」の人は、水分貯蔵庫である筋肉の量が減っているため、脱水や熱中症リスクが高くなります。

サルコペニアの人は脱水や熱中症になると、脳保護のために血圧が一時的にバーンと上がります。その状態で急に立ち上がると、今度は血圧が一気に下がるため、そのまま意識がなくなり、命を失うといった事態が起こりかねません。

さらに日本人は、サルコペニアの人も含めて処方されている降圧薬をきちんと飲む人がほとんどです。そのため、ただでさえ血圧が下がる夏は降圧薬が効きすぎて血圧がさらに下がりやすくなる恐れがあります。

糖尿病や高血圧などの基礎疾患がある人、心臓や腎臓の異常を指摘されている人、高齢者で筋肉量が落ちている人などは、しっかり水分補給したうえで、横になっている姿勢から急に立ち上がることは避けるよう意識しましょう。

※本稿は、『60代、70代なら知っておく 血管と心臓を守る日常』(講談社ビーシー)の一部を再編集したものです。


60代、70代なら知っておく 血管と心臓を守る日常』(著:天野篤/講談社ビーシー)

60代、70代は、病気とともに生きている。だから、通院、投薬が合って当たり前。

問題はそんな日々のなかで、不本意に死ぬのか、天寿をまっとうするのか――。

上皇陛下の執刀医にして、世界屈指の心臓血管外科医がわかりやすく記した「命を落とすリスクを減らす」暮らしの処方箋。