「長坂な」

 そうだったな、って西森さんは呟(つぶや)くように言って、続けた。

「あいつもな、そんなふうにな、人を大切にするようないい気質を持った男だったんだがな。ヤクザには似合っとらんかったが」

「あ、やっぱり知っていたんですか」

 三公さんが訊いた。

「一応はな。まぁあれだよ。会社を定年退職したサラリーマンが、新しく就任した社長の若い頃を知ってるようなもんだな。昔の部下だったみたいになぁ」

 昔の部下。

「私はねぇ、まぁ確かに昔は暴力団の組長みたいなことやっとったけどな。ちょいと違うと言えば違うんだが、系列でいやぁ長坂んところと同じだな」

 系列って、何となくわかる。

 暴力団にも天辺にいるところがあって、その傘下にいろんな組があるとかないとか、そういう話だと思う。

「どうでしょうか。今、その長坂さんが殺されたことで、抗争みたいなことは」

「ちらほらやっとるな。ただ、今回のはなぁ」

 ちらりと僕を見た。