「違う県とかにですか?」
「いや、そこまでしなくても大丈夫じゃないかな」
ずっと長い間暮らしているから、そこから動けばいいだけって。
「息子さんの学校の関係もあるだろうから、まぁ今のところから何駅か離れた町に行けばいいだろうね。引っ越し費用などは、大丈夫だ。お母さんにお金が入る」
「お金?」
またホームラン。二回も出るなんて凄い。
ホームランを打った人には景品が出る。新品のバットとかボールセットとかの野球用品の他には、子供向けにプラモデルとかもあるけど、この人はいるだろうか。後で訊かなきゃ。
「保険金というものだ。大抵の人は保険に入っていて死亡時には受取人が受け取れる」
暴力団の人でも、保険に入れるのか。
「受取人が、お母さんだったんですか」
「そういうことだね。それで、僕がそれを担当できる」
担当。
そこでちらっと僕を見て、微笑んだ。
「そういう仕事をしている人なんだよ。僕は」
ヤクザの人ではないのかな。