イラスト:大塚砂織

元気の秘密は「癒やしの洞窟」

ウィーンに住む私の養母は現在、95歳。彼女の元気の秘密は、ガシュタイナー・ハイルシュトレンという、ラドン(低放射線)、温熱、高湿度を利用した世界でも唯一の治療を定期的に受けることだ。その治療を行っているのは、「癒やしの洞窟」と呼ばれるザルツブルク州の治療施設。当地は、冬はスキー客、夏は登山客で賑わう、おしゃれなリゾート地でもある。

19世紀まで金や銀の採掘が行われていた、タウエルン山のガシュタイナー渓谷。1940年、すでに廃鉱になっていたこの山を再度採掘したところ、坑道の奥1800mのところに高温多湿の洞窟が発見された。強度の関節炎で苦しんでいた鉱員たちがたまたまその場所で休むと、痛みが和らぎ、洞窟の治癒効果が明らかに。坑道内部に自然に存在する低レベルのラドンが細胞に刺激を与え、新陳代謝がよくなるのだという。

主にリウマチ、気管支炎、呼吸器疾患、骨粗しょう症、花粉症に効くそうで、「癒やしの洞窟」では、2~3週間滞在する人が多い。治療法はシンプルで、洞窟の中で水着を着て1時間ほど寝そべっているだけでいい。10回も行うと生まれ変わったようによくなるというのだから、長年愛されるはずである。

ほかにもこの洞窟では、漢方や太極拳、気功を取り入れたユニークな治療法を行っており、施設に常駐する医師が患者の話を聞いて、その人に合った治療をしてくれる。日本からのツアー客も多く、メディカルツーリズムとして世界中から人が集まっているそうだ。

今年は日墺国交樹立150周年の年。オーストリア旅行に行くならば、この一風変わった神秘的な洞窟治療を体験してみてはいかがだろうか(ウィーン在住)