愛用するギターは、マーティンの中でも最高峰と言われるD-45の、1993年に50本限定でリリースされたデラックス。Tree of lifeと呼ばれる豪華なインレイが美しい。

長く演奏活動を続けるために

さだ 前橋さんはもう60年以上、演奏活動を続けてらっしゃるわけですが、自分を高めるモチベーションは何ですか? 人生100年時代になって、「モチベーションを保ち続ける」というのは、現代人のテーマでもあると思うんですよ。

前橋 楽譜に作曲家が何を込めたか、その思いを汲み取って私なりに咀嚼して表現すること。若い時から30、40代を経て、今、同じ楽譜を見ても、思いもかけない新たな気づきや発見があります。それが面白い。

さだ 僕も、歌い方や表現が違いますね。特に今は優れたギタリストやドラマー、ピアニストたちとステージに立っているので、昨日と同じセットリストでも、同じ演奏はできないんですよ。それぞれが演奏中に仕掛けてくるので、「あ、そうくる!?」というプレイがきた瞬間、モチベーションがバーンと上がって。

前橋 音楽って、そういうものだと思います。いい仲間ね。

さだ お客さんもそれをわかって楽しんでくださる。これも音楽家の財産だと思うんですよ。そういう意味で、僕はいよいよお客様に恵まれているな、と思いますね。

前橋 さださんはどの年代の人にも心に響く詞を歌ってらっしゃる。

さだ 僕は若い頃からボロボロに言われてきたから、今まで続けられているのかもしれません。「精霊流し」は人が死んだ暗い歌と言われ、「無縁坂」で母が、と歌ったらマザコンと言われ。「雨やどり」では女の子の歌を男が歌って軟弱者だ、「関白宣言」は女性蔑視だ、と。歌をちゃんと聴いてくれれば、俺より先に死なないでって言っているんですけどね。

前橋 いろんな人がいるんだから、聞かなきゃいいのよ。