さだ もはや炎上商法です(笑)。今はどこにいても音楽を聴ける時代になりましたが、僕らのことを知らない若い世代に僕らの音楽を伝えるのは、結局ライブしかないと思っています。実際、幅広い世代が聴きにきてくれていて。ただ、クラシック音楽は敷居が高いと感じる人がいるでしょう?
前橋 なので、私は1人でも多くの方に気軽にコンサートホールに足を運んで生のヴァイオリンの音を聴いてほしいと、自主企画で始めたのが、週末の午後のひと時に低料金で楽しむサントリーホールのアフタヌーン・コンサートです。今年の6月に20周年を迎えます。
さだ 僕も前橋さんが演奏する1736年製のヴァイオリン、デル・ジェス・グァルネリウスの音を聴いていますが、やっぱり生の音は違うんだなあ。
前橋 私は1回1回のコンサートを大切に、1日でも長く弾きたいと思っています。10代でのソ連の3年間が、ここまで長く弾き続けてこられた礎になっていると思います。
さだ 僕はこの1月に、咽頭炎をやりましたでしょう? 少し休んで、ライブも延期させていただきました。今回改めてわかったのは、年を取ると回復に時間がかかるということ。
前橋 今日もこんなにお話しになって、心配です。この先も長いこと歌っていただきたいから、体だけは気をつけてください。
さだ 自分の体のことなのに、実際に年を取ってみないとわからないことばかりで。その点、今の若い音楽家には気力も体力も技術も十分にあるわけですが、人間力を高めることも必要ですよね。ほかに大切なことは何だと思いますか?
前橋 それは、たくさん挫折を味わうことよ。(笑)
さだ そこに答えがあった(笑)。やっぱり挫折って大事ですね。