(写真提供:Photo AC)
厚生労働省が行った「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」によると、企業に対する調査において、過去3年間でパワハラの相談件数は「変わっていない」という回答が最も多かったそう。様々な嫌がらせがあるなか、心理セラピストの大鶴和江さんは「既読スルー」「ネチネチとした嫌味」といった、遠回しでわかりづらい「ずるい攻撃」をする人の存在も指摘しています。そこで今回は、大鶴さんの著書『既読スルー、被害者ポジション、罪悪感で支配 「ずるい攻撃」をする人たち』から、その心理と対処法を一部ご紹介します。

パワハラ・モラハラ・いじめが減らない理由

人は自分の中に存在する、怒り、憎しみ、敵意、不満、孤独、絶望感、罪悪感、無価値感、劣等感、空虚感、自己否定感、愛情欠乏感、これらの感情や感覚はできれば感じたくないものです。

しかし、あまりにもこれらの感情や感覚から目を背けたいために、感じないように我慢して飲み込んで抑圧し、心の中から排除しようとします。

自分の中の悪は認めたくない、自分は正しい、自分はダメじゃない、自分はもっと素晴らしいはずだ、もっと評価されるべき、でも評価されない悔しい、あいつよりも自分が劣っているなんて認めたくない……そのような歪んだ自尊心や劣等感が引き起こすトラブルがパワハラやモラハラという問題につながります。

パワハラやモラハラは、自分の中にある鬱屈した思い、不満や怒りを、関係のない自分よりも無抵抗の弱い人にぶつけて憂さ晴らしをする行為です。

いじめの本質もこれと同じです。

子どもが小学校などで友達をいじめるのにも、親に言えない不満や抑圧された怒りを弱い子をいじめることで解消しているケースが多く見られます。

他者を攻撃することで「得たい感情」があるから誰かをいじめるのです。

自分より強い者に対する恐怖と支配を受け入れ、服従している自分を否認して、自分より弱いものを服従させる。そうすることで、自分の惨めさや劣等感や無価値感を感じなくて済むわけです。

そういう意味では、これらの攻撃をする人がいかに日常で不安やストレスを抱えているのか、病んでいるのか、を想像することができます。

相手が「弱いからいじめる」とはまさに「自分の心の弱さ」を相手に映し出して否定する行為です。

だから、いじめの本質はいじめる側の心の弱さであり、いじめをなくそうとするならば、いじめをやめさせることも大事ですが、いじめる側の人間の心の問題を深く分析し、いじめている本人が自分の心の問題に直面することがより大事になるでしょう。