六条御息所ゆかりの野宮神社。黒木の鳥居と小柴垣が特徴(撮影◎筆者)
NHK大河ドラマ『光る君へ』の舞台である平安時代の京都。そのゆかりの地をめぐるガイド本、『THE TALE OF GENJI AND KYOTO  日本語と英語で知る、めぐる紫式部の京都ガイド』(SUMIKO KAJIYAMA著、プレジデント社)の著者が、本には書ききれなかったエピソードや知られざる京都の魅力、『源氏物語』にまつわるあれこれを綴ります。

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呪詛したり、呪詛されたりの平安時代

大河ドラマ『光る君へ』では、陰陽師が活躍したり、誰かが誰かを呪詛したりするエピソードがよく登場します。

記憶に新しいところでは、道長(柄本佑)の姉である女院・詮子(吉田羊)が伊周(これちか・道長の甥=三浦翔平)らに呪詛されて病に伏すという“事件”がありました。どうやらこの一件は、詮子が伊周を陥れるために仕組んだお芝居だった可能性が高いのですが、病気になって苦しむのは物の怪のせい、あるいは何者かに呪詛されているからだと考えることは、平安時代の人々にとっては一般的だったようです。

そんなわけで『源氏物語』にも物の怪が登場します。なかでも有名なのは、光源氏の恋人・六条御息所の生霊でしょう。

六条御息所は、光源氏の正妻である葵の上に嫉妬するあまり、葵の上にとりついて、ついには殺してしまう……。そのきっかけとなったのが、賀茂祭(葵祭)の見物場所を巡って、葵の上と六条御息所の従者が争った、いわゆる「車争い」です。(巻9「葵」)

前の東宮(皇太子)の妃であった六条御息所は、プライド高き女性です。理性では「もう源氏のことはあきらめよう」と思っているのに、心の底では源氏に執着しており、葵の上に深い恨みを抱いている。本当の感情を表に出せないがゆえに、魂が無意識のうちに生霊となり、葵の上を苦しめるのです。

『光る君へ』には『源氏物語』のオマージュとおぼしきエピソードが散りばめられていますが、今のところ、「車争い」や六条御息所の生霊を想起させるものは登場していないように思います。