睡眠薬の処方率と7時間以上寝ている人の割合(グラフ)
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薬に頼ってもOK?

なかなか眠れない人には手っ取り早く睡眠薬を使う場合もあると思います。私自身は滅多に処方しませんが、薬に頼っても問題はありません。

ただし、睡眠薬の処方率と睡眠の状態を見てみると、ある仮説が浮かんできます。睡眠薬の処方率は55歳から59歳で男性3.6%、女性5.2%。これが、65歳以上になると男性7.6%、女性10.2%とほぼ倍増します。

対して、「7時間以上寝ている人の割合」というデータを見ると、50代で男性18.3%、女性14.4%。70代以上は、男性47.6%、女性39.2%と、こちらも2倍以上に増えているのです。

これらを考え合わせると、必要以上に長時間寝ようとして睡眠薬に頼っている、という結論が見えてくるといえます。

病院に行って、「最近眠れない」と主治医に伝えると、睡眠薬を処方してもらえるでしょう。しかも保険適用で、安価で入手できます。

でもよく考えてみてください。みなさんが糖尿病や高血圧の薬を飲む時、血糖値や血圧を測らずに薬が処方されることなどないでしょう。血糖値や血圧を測定して、高いと医師が判断したうえで、薬を飲みはじめますよね。

しかし、睡眠はなぜか、患者さんによる「睡眠時間が短い」という自己申告や、「寝つけない」といった感覚的なものによって処方されているのが現状なのです。

明確な不眠症でもない限り、私は睡眠薬を使う前にできることがあると考えています。まずは生活習慣を改善したうえで、それでも寝られない時に睡眠薬の助けを借りるのがあるべき順序だと思うのです。