「起きている努力」を

シニアの場合、朝早くに目が覚めると昼過ぎには疲れて眠くなり、長いお昼寝やうたた寝をしがちです。また、早めの時間に夕食を食べた後、特にすることがないから布団に入る、という人も多いのではないでしょうか? そうするとまた翌朝早く目が覚めてしまい、「遅寝」「遅起き」の習慣がいつまでも身につきません。

よく、「日本人は睡眠不足」などと言われますが、シニアにとって深刻なのはむしろ「寝過ぎ」なことだと私は思います。

7時間の睡眠が確保できていれば健康に問題はなく、逆にだらだら寝ないことを意識すべき。残りの17時間はしっかり活動してください。人は「眠る努力」はできませんが、日中「起きている努力」ならできる。家にいる時間が長くて、いつでも眠れる環境にいる方は、日中はウォーキングなどの軽い運動を行って体を動かしたり、読書や趣味に取り組んだりして頭を働かせましょう。

ただし、仮眠やうたた寝が一切禁止というわけではありません。午後3時までに15分程度の仮眠なら夜の睡眠に影響がないので、時間を計ってメリハリのあるお昼寝を心がけてください。

この生活習慣を守ることで、もう一つ、シニアのお悩みを解決することができます。それは、夜中にトイレに行きたくなって目が覚めてしまう、というもの。これが嫌で睡眠薬を飲む人もいるようですが、いくら薬を飲んでも、尿意を抑えることはできません。

年齢を重ねると、「ADH」という抗利尿ホルモンが減少します。つまり、我慢できずすぐ尿意を感じるということ。ですから、夜中にトイレに起きてしまうのは当たり前です。膀胱というタンクがいっぱいになってしまったら、出すしかありません。

これまでにお話しした生活習慣を守っていれば、それまでに深い睡眠がとれているはず。夜中に起きてトイレに行ったとしても、またすぐに眠れる状態になっているのです。

「トイレに起きてしまうかも」というストレスは、コルチゾールを活性化させてしまいます。また、睡眠に限らず、若い頃と同じ、というわけにはいかなくなってくるもの。変化を受け入れ、今できることに取り組むことが、結果的に快眠をもたらすのです。

「とにかくストレスを減らす」という観点で、睡眠環境も見直してみましょう。ベッドや枕、パジャマなどの寝具、寝室の温度や湿度、明るさ、部屋の香りなど、自分が最もリラックスできるものに変える。睡眠薬にお金を使うより、よっぽど有意義だと思います。