ライブさながらのステージで再現
1977年に公開された映画『サタデー・ナイト・フィーバー』といえば、当時のディスコブームを背景に、人生を模索する若者たちを描いた名作だ。主人公のトニーを演じたジョン・トラボルタの出世作でもあり、彼のナイーブな眼差しと、右腕を高く掲げて人差し指を立たせる“決めポーズ”を覚えている人も多いのでは。そのミュージカル版は、98年にロンドンで初演。今回は2018年に、やはりロンドンで幕を開けた最新演出版の、待望の来日となる。
ブルックリンのペンキ屋で働くトニーは、毎週土曜日のディスコ通いだけを楽しみに過ごす若者。いつものようにディスコで得意のダンスを披露していると、魅力的な女性ステファニーと出会う。同じブルックリン生まれながら、知的で自立している年上の彼女と接しているうち、トニーも人生を見つめ直す。友人との別れや異性との関係の変化を経て、トニーは次第にステファニーとの生活を夢見るように。それにはダンスコンテストで優勝し、賞金を手に入れることだと決意するが……。
トニーら若者たちの鬱屈したエネルギーを、ディスコナンバーに乗せて描いたシーンが爆発的な人気を呼んだ『サタデー・ナイト・フィーバー』。サウンドトラックは、なんと全米アルバムチャートで24週連続1位を獲得。「ステイン・アライヴ」「愛はきらめきの中に」「恋のナイト・フィーバー」などを収めたこのアルバムは全世界で4000万枚を売り上げ、1978年度のグラミー賞では最優秀アルバム賞に輝いた。今回のミュージカル版でも世界観はそのまま! 舞台を色とりどりのライトが照らすダンスフロアに置き換えて、ビージーズさながら3人のシンガーが歌い、フロアではキャストが踊りまくるという、ライブステージ・スタイルで進行する。
トニーを演じるのは、世界中でブームを巻き起こしたダンス作品『白鳥の湖~スワンレイク~』や、同じマシュー・ボーン振付・演出の『ドリアン・グレイ』などで主演してきたリチャード・ウィンザー。近年はBBCの連続テレビドラマに出演するなど俳優としても活躍しているだけに、繊細な演技力が必要とされるトニー役にはピッタリ。ミュージカルファンはもちろん、ダンスや映画のファンにも、もちろんまったくの初見でも文句なしに楽しめるエンターテインメントとなっている。
サタデー・ナイト・フィーバー
12月13~29日/東京・東京国際フォーラム ホールC
演出/ビル・ケンライト 振付/ビル・ディーマー
出演/リチャード・ウィンザーほか
☎0570・550・799(キョードー東京)
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ミュージカル俳優のスペシャルコンサート
1年を通して多くのミュージカル作品が上演されるようになった昨今。その理由は、花も実もあるミュージカル俳優がグンと増え、キャスティングの幅が広がったことにあるだろう。20年ほど前は、“ミュージカル”そのものが揶揄される対象だったことを考えると、隔世の感……。本作は、そんな日本のミュージカル文化を牽引してきたベテラン俳優と、次世代の注目株として人気の若手俳優によるスペシャルコンサート。第1部はミュージカルの名曲を、第2部はその日のテーマに沿った曲をお届け。「Xmas Version」ではクリスマスソングや映画から選りすぐりの曲を、「Year-end Version」では「ILM紅白歌合戦」と題して年末のひとときを盛り上げる。
I Love Musical Xmas&Year-end
12月24~25日(Xmas Version)、28~29日(Year-end Version)/
東京・ヤマハホール
企画/岡田浩暉 構成・演出/土城温美 音楽監督/鎌田雅人
出演/【Xmas Version】岡田浩暉、鈴木勝吾、新納慎也、梅田彩佳、美弥るりかほか
【Year-end Version】石井一孝、岡田浩暉、田代万里生、二宮愛、水夏希ほか
☎03・6277・6622(る・ひまわり)
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文学と演劇のコラボプロジェクト
2016年に『コンビニ人間』で芥川賞を受賞した村田沙耶香と、11年に『自慢の息子』で演劇界の芥川賞といわれる岸田國士戯曲賞を受賞した松井周。一見、どこにでもいるような“普通”の人々を描きながら、独自の視点で社会の命題を可視化する手腕は、両者に共通する魅力のひとつだ。そんな2人の初めての共作は、近未来を舞台に、離島の“千久世島(ちくせじま)”で発掘される化石由来のDNAが、ヒトや動物の遺伝子組み換えに役立つと注目されるところから始まる。その島に住む男のもとに、奇祭で失ったはずの弟が別人のようになって帰ってきて……。11月末には、村田による小説『変半身』も刊行。文学と演劇のコラボプロジェクトから目が離せない。
変半身(かわりみ)
11月29日~12月11日/東京・東京芸術劇場 シアターイースト
原案/村田沙耶香、松井周 脚本・演出/松井周
出演/金子岳憲、三村和敬、大鶴美仁音、
日髙啓介、能島瑞穂、王宏元、安蘭けい
☎0570・010・296(東京芸術劇場ボックスオフィス) ※三重、京都、神戸公演あり