相方とあっちの世界で会った時に

それとね、今になって師匠である横山やすしの言葉が今一度頭の中に響いています。昔から技術的なことは一切言わないんです。「勝てよ!負けるな!」だけです。若い頃はその意味が分からないというか「もう少しヒントとか、具体的なことをちょっとだけでも言ってくれたらいいのに…」とも思ってましたけど、今になったらね、意味が分かってきたんです。

勝つということは、たくさんいる中から抜けるということ。となると、人と同じことをやっていたらダメ。結局、追い求めるのはオリジナリティーなんですよね。人とどれだけ違うか。そして、それがきちんと面白いか。そこなんですよね。それを極めていけば、自ずと勝てる。ホラ吹き漫才もそうかもしれませんけど、人と違うことをやって認めてもらう。だからこそ、車いすになってもお客さんが笑ってくださったのかなとも思いますし、やっといろいろな意味が分かってきた気がします。

また、相方とあっちの世界で会った時に話せるよう、あれこれ今のうちにやっておかないといけないとも思いますけど、あれこれやる歳でもないし、とにかく今いただいている仕事を全力でやる。元気よく暮らす。それしかないのかなとも思っています。

特に、晩年は相方がなかなか動けなかったので、舞台の上ではこれでもかと動く。そんなことも考えています。

あとね、これは良いことなんですけど、舞台に立つようになってから嫁が家でも今まで以上に主張するようになってきまして。家の勢力図が明らかに変わってきてもいますけど(笑)、ま、それはそれで楽しみながらやっていきたいと思っています。

■横山ひろし(よこやま・ひろし)
1947年1月19日生まれ。愛媛県出身。本名・小林秀光(こばやし ひでみつ)。妻は松竹芸能の後輩にあたる漫才師の春けいこ。故横山やすしさんに師事し、68年に横山たかしとコンビ結成。71年、NHK上方漫才コンテスト新人賞受賞。94年に上方漫才大賞で大賞受賞。たかしさんの大金持ちキャラを活かしたホラ吹き漫才で人気に。2019年、たかしさんが逝去。その後、妻の春けいことコンビを結成する。