「私らが言えた義理じゃねえんですが、利用しているつもりでも、いつの間にか利用されちまう」
「何のお話でしょう?」
「宗教法人ブローカーとお付き合いがあるでしょう? あなたが、大木神主や田代住職に近づいて、氏子総代や檀家総代になりたがっているのは、そのためじゃないですか?」
「何をおっしゃっているのかわかりませんね。不動産のご用命でないのなら、お帰りください」
「どういう経緯でお知り合いになられたのかは存じません。しかし、高森などと付き合っていいことなど一つもありません」
「これ以上居座るおつもりなら、警察を呼びますよ」
「谷津さんですか?」
 谷津の名前を聞いて、原磯の顔色がますます悪くなる。阿岐本の言葉が続いた。
「谷津さんと良好な関係を築いているとしたら、それはいいことです。しかし、今のままなら、あなたも高森といっしょに捕まりかねませんよ」
「私は捕まるようなことはしていません」
「暴対法や排除条例は、ヤクザ者にとっては極めて面倒でしてね……。高森があなたを利用して何か経済活動をやろうとしたら、条例違反で捕まる。そうすれば、あなたも共犯です」
「ばかな……」
 原磯の額に汗が滲みはじめる。
「まあ、捕まらないまでも、ヤクザ者と何か画策していたら、最後には尻の毛まで抜かれちまいますよ」
 そのとき、日村は表のほうが騒がしくなったのに気づいた。
「オヤジ……」
 日村がそう言ったとき、突然ドアが開いた。そこに谷津が立っていた。
 

 

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