「その不動産屋の経営者が、ちょっと怪しい動きをしていましてね」
「どういうふうに怪しいんだ?」
「だから、それは谷津さんに訊いてください」
仙川係長はうんざりした顔で言った。
「何で俺が谷津に訊かなきゃならないんだよ」
「自分らがその不動産屋で経営者と話をしていたら突然、谷津が……、いや、谷津さんが現れたんです。どうして自分らがその不動産屋にいたことを谷津さんが知っていたのか……。そいつは自分らにもわからないんです」
「従業員か誰かが通報したんじゃないのか?」
「それにしては谷津さんの現れるのが早かったように思います」
仙川係長が考え込んだ。
「どういうことだろうな……」
すると、甘糟が言った。
「張り込んでいたんじゃないでしょうか?」
「張り込んでいた?」
仙川係長が聞き返した。「何のために?」
「それは谷津さんに訊かないと……」
仙川係長は顔をしかめる。
「あいつに電話するのが嫌なんだよ」
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