義理人情に厚いヤクザの親分・阿岐本雄蔵のもとには、一風変わった経営再建の話が次々舞い込んでくる。今度は町の小さなお寺!? 鐘の音がうるさいという近隣住民からのクレームに、ため息を吐く住職。常識が日々移り変わる時代のなか、一体何を廃し、何を残すべきなのか――。
事務所に戻ったのは午後七時頃のことだ。
「あ、帰ってきた」
そう声を上げたのは、甘糟だった。仙川係長の姿もある。
「ご苦労さんです」
阿岐本が頭を下げたので、日村も礼をした。
甘糟が言った。
「中目黒署に連行されたんだって? まったくよその縄張りで何やってんのさ」
日村がこたえた。
「警察が縄張りなんて言葉を使っちゃいけません。それは自分らの言葉です」
「質問にこたえてよ」