モノとの折り合い方は人それぞれ
痛感したのは、気力と体力がないと捨てられないということ。そんな自分の経験も作品に投影しました。
「捨てる/捨てない」に関しては、多くの人が、なんらかの葛藤を抱えているはずです。最近はどちらかというと、「モノは捨てたほうがいい」という風潮が一般的ですよね。でも、私がこの小説で書きたかったのは、そういうことではありません。
たとえばテレビで高齢者のお宅が映ったりすると、かなりぎっしりモノがあったりします。レトロ感のあるぬいぐるみとか、ぜんっぜん上手じゃない手作りの飾り物とか(笑)。そんな空間も、日々のなかで懐かしさを感じることができてちょっといいなぁと感じます。
誰も彼もがシンプルな部屋に住めばいい、というものでもない。何が大切なのかは人によって違うし、他人が「なんであんなモノをとってあるんだ」と思っても、当人にはかけがえのない存在だったりする。
モノとの折り合い方は人それぞれだからこそ、そこにドラマが生まれるし、人となりもにじみ出てくるのではないか――そんな思いが詰まった一冊です。