勘違いの手応え
そんな団体の厳しいチケットノルマを達成するために、ゆかちゃんは友達を連れてライブを観に来てくれたりしました。
ゆかちゃんが一度、お母さんを連れて観に来たときがあります。
「給食費を盗んだ生徒を、家庭環境から勝手に推測する教師のコント」をやり終わったあと、口を開かずものすごくやさしい目をする二人を見て、勘違いの手応えを感じたのを思い出します。
今思えばあれはコントのセリフに引いていた表情でした。
でも、舞台でネタをやる僕を見て、ゆかちゃんは照れくさそうに、嬉しそうに、見守ってくれるのでした。
やっと動き出した僕を喜んでくれたのだと思います。
※本稿は、『自分は、家族なしでは生きていけません。』(ポプラ社)の一部を再編集したものです。
『自分は、家族なしでは生きていけません。』(著:あばれる君 イラスト:和田ラヂヲ/ポプラ社)
ひとり暮らしのときは家族の大切さなど考えたこともありませんでした。
そんな僕に人間的な思いやりを教えてくれたのは、僕の妻と、息子たちでした――。
あばれる君はじめての書き下ろし「家族」エッセイ。