さまざまな治療法があるなかで、私は人工関節に置き換える手術を選択しました。ところが、医師に「もっと年をとってからのほうがいいでしょう」と言われたのです。人工関節は経年劣化していくため、下手に早く手術をすると、高齢になってから再度処置をすることになるとのこと。「限界まで我慢してください」と言われました。

そう言われても痛みはおさまりません。脚が痛いと、体と心までギュッと硬くなっていきます。それでも仕事は休まず、痛み止めを飲み、杖をついて、足を引きずりながら舞台に立っていました。7年前のある日、とうとう最後に残った軟骨がボロッととれた感覚があり、痛くて脚が動かせなくて、ようやく手術をする決断をしたのです。

手術後のリハビリは最低でも3ヵ月かかり、その間は歩けませんよ、と医師に告げられました。最初、硬くなった筋肉をほぐして伸ばすのですが、それが痛くてね。でも目標がありましたから、つらくはなかった。

3ヵ月後に稽古が始まる舞台にどうしても出演したかったんです。明治時代の物語で、和服を着て立ったり座ったりするシーンがあるので、股関節を動かせないと演じられません。なんとか治すしかない!

元来が凝り性で。理学療法士さんに言われたメニューよりさらにきつい訓練を課して追い込んでいたら、医師に「ちょっとやりすぎです。筋肉が炎症を起こしています」と注意されたほどでした。

おかげさまで、3ヵ月で完全に歩けるようになり、舞台に出演。「この年齢で、ここまで早く機能が回復した人は珍しい。アスリート並みです」と医師も驚いていましたね。

人工関節を入れて歩けるようになってからは、文字通り、体がフワーッと解放された感じでした。痛みがないってすばらしい。体だけでなく精神的にもどんどん明るくなって今に至っています。脚もすっかり回復して、痛みなくスタスタ歩けるようになりました。