《家族の悩み2》

やめてもらうにはどう伝えれば……

⇒説得するよりも納得してもらう

避けたいのは「もう年なのだから」と頭ごなしに返納を迫ること。本人のプライドを傷つけるばかりか、怒りからさらに聞く耳を持たなくなる可能性があります。

また、車の鍵や免許証を隠すという方もいますが、本人が自分で新しい鍵を作ったり、免許証不携帯で運転してしまうケースもあるので、お勧めできません。信頼関係を損なうと将来、介護が必要になったときまで引きずることになりかねません。

ではどうすればよいか。ポイントは「説得するよりも納得してもらう」です。具体的にどう危ないのか、なぜ運転をやめるほうがいいかを指摘する。その際、主語を自分にして「私が」心配だからやめてほしいと言うのもコツです。

家族の中で誰が説得するかはよく考えたいですね。私が取材した家庭で、長女がいくら返納を迫っても聞き入れなかった父親が、長男の提案には応じたというケースがありました。

この長男が巧妙だったのは、年金で暮らす父親に「ガソリン代やメンテナンス費用、税金、保険料などをこの古い車にかける価値があるのか」と、コスト面を計算してから切り出したこと。

また高齢の男性はプライドが高い傾向があるので、本人が一目置く人から言ってもらうと効果的なケースもあります。子どもの声には素直に従わなくとも、主治医やかつての上司などの言葉なら耳を傾けるかもしれません。

一方、女性は同性の友達など周囲の意見に影響を受けやすい傾向があります。母親の友達に頼んで「みんなもう運転はやめているわよ」と言ってもらい成功した例も。人によってそれぞれのツボがあるので、それを見極めて試すのも一案です。

 

自主返納で受けられるサービスも

免許返納後の買い物や病院通いなど、移動手段をどうするか一緒に考えることも大切です。介護の専門職は「手まめ、足まめ、口まめ」という言葉を使うことがあります。親が免許を返納した方に話を聞くと、親のために連絡をしたり、工夫を考えたのが親にとってはうれしいこととして残るようです。親を思う気持ちが最終的には心に響くのでしょう。

また免許を自主返納することで受けられるさまざまな特典もあります。引っ越しの割引、金融機関の定期預金の金利優遇、ホテル、レストランや娯楽施設の割引、デパートやコンビニなどの無料配送のほか、いろいろなサービスが提供されています。

自治体によっては「65歳以上の返納者にタクシーチケット3万円分交付、また満75歳未満の返納者は町内どこでも、1回600円でタクシーが利用できる」(広島県神石高原町)、「返納者全員に市共通商品券1万円分」(石川県かほく市)などの特典を用意しているところもあります。説得材料にも使えますので、お住まいの地域のサービスを調べてみてください。