イラスト:泰間敬視
高齢になれば誰しも脳の機能が落ち、運動機能が低下するもの。ちょっとしたミスの積み重ねやとっさの判断能力の衰えが、重大事故につながるのです。高齢者の運転について取材を重ねている小山朝子さんが考える、やめどきとは。(構成=古川美穂 イラスト:泰間敬視)

脳の機能の衰えは検査ではわからない

高齢ドライバーによる交通事故のニュースが相次いでいます。2018年度の交通事故のうち、75歳以上の高齢運転者が関与したのは約8%。全体の比率としては決して多いわけではないのですが、高齢ドライバーの場合は被害者が死亡に至るような大事故が多いのが特徴です。

17年に道路交通法の一部が改正され、75歳以上は3年に1度の免許更新時に認知機能検査を受けることが義務付けられました。しかしこれにパスしても、次の更新までの3年の間に認知機能や身体機能が低下することも考えられます。

また認知症ではなくても、脳の機能は年齢とともに衰えていきます。たとえば、前頭葉の機能が低下すると起きるといわれる現象が、性格の先鋭化です。自信満々な人はさらに自信家に、頑固な人はさらに頑固になる。

このような脳の働きにより、「自分はまだ大丈夫」という過信が生まれ、身体機能の衰えを過小評価して事故につながるケースもあります。しかしこうした変化は認知機能の検査をしても判断できません。

親が事故を起こしてからでは遅いと思うけれど、運転をやめさせるのは難しい。このように悩んでいる方は多いと思います。高齢者の免許返納に関する、子ども世代の不安を解決する方法を考えてみましょう。