龍頭鷁首が登場する「三船祭」

そんな平安貴族の舟遊びを再現したのが、毎年5月に嵐山で開かれる「車折(くるまざき)神社」の例祭、「三船(みふね)祭」です。

このお祭りの原型は、9世紀末に宇多上皇が大堰川で行った舟遊びとされ、「三船」の名は、和歌、漢詩、管弦の三つの船を浮かべて、それぞれの名手を船に乗せたことに由来するとか。つまり、道長たちの舟遊びと同じですが、こちらは「三舟」ならぬ「三船」と表記します。

今年はあいにくの雨模様でしたが、川岸で多くの見物客が見守るなか、大堰川に浮かべた龍頭鷁首舟の上で雅楽や舞楽が奉納されました。

同じ清原氏の出身の清原頼業が祭神ということで、車折神社の境内には清少納言を祀る「清少納言社」もあります。そんな関係で、近年の「三船祭」には清少納言に扮した女性も舟に乗っていたのですが、昨年と今年は、車折神社「芸能文化振興会」総裁に就任した女優の観月ありささんが参加。川に次々と扇を流す「扇流し」を行うなど、お祭りに華を添えました。

「扇流し」は室町時代の故事にちなんだもので、流れてくる扇を受け取ると、芸術の上達や無病息災などのご利益があるといわれます。川面を漂う美しい扇に、響き渡る笙や笛の音。渡月橋を訪れた観光客もしばし足を止め、平安絵巻のような光景に見入っていました。

「三船祭」には龍頭鷁首舟も登場する