生涯の汚点

信虎の追放劇は、信玄にとって生涯の汚点となった。

ライバルの上杉謙信が弥彦(やひこ)神社(新潟県弥彦村)や武水別(たけみずわけ)神社(長野県千曲市)に捧げた願文には、信玄が実父の信虎を追放したことは人倫に背くことであると記されており、手厳しく非難された。

信玄には信虎追放の理由があったに違いないが、それは一切考慮されなかったのだ。

しかし、信虎を追放することによって、武田家中はいっそう連帯感を強め、さらに発展を遂げた。

信玄の判断は、正しかったのである。

※本稿は、『戦国大名の家中抗争 父子・兄弟・一族・家臣はなぜ争うのか?』(星海社)の一部を再編集したものです。


戦国大名の家中抗争 父子・兄弟・一族・家臣はなぜ争うのか?』(著:渡邊大門/星海社)

15世紀後半以降、戦国大名が争った時代。

大名たちは他国の大名と戦うだけでなく、一族や家中の敵と戦わなければならなかった。

本書は信頼できる史料や先行研究に基づき、なぜ戦国大名は身近な者同士で戦ったのか、時代の本質に鋭く迫る。