義元と信玄による共謀?

他の説はどうなのか。

(2)説は『甲陽軍鑑』に記載されているが、いささか荒唐無稽であり、現実味に欠ける。

そもそも信虎は嫡男の信玄を嫌悪しており、次男の信繁(のぶしげ)に家督を継がせようとしていたという。信玄は、下手をすれば廃嫡の危機にあったといわれている。

(2)説には、親子不和の逸話が影響しているのか。仮に、信玄が今川氏と共謀していたならば、信虎を殺害するのが妥当だろう。

(3)説は『甲斐国志』に載る説であるが、その後の情勢を勘案すると、決して首肯できるものではない。荒唐無稽である。

信玄が義元を陥れようとするならば、すぐに駿河国に攻め込むなり、あるいはのちに信虎の帰還を認めるなり、何らかの措置をするはずである。

その後の動きを勘案すると、(2)(3)のような陰謀説は、創作性が高いように感じられてならない。(2)(3)の説はおもしろいが、退けるべきだろう。